05-06 Players tracks 「10.ジュニーニョ」
とんでもねえヤツがJ1を襲撃する。エメかジュニか。
05シーズンの開幕前、昇格の原動力となったジュニーニョは、前年度に26ゲーム27ゴールを挙げ、圧倒的実力を証明したブラジル人得点王と並べられていた。J2で39ゲーム37ゴールを記録した実績はもちろん、エメルソンとは一味異なる脅威的スピードが注目と評価の理由だった。
早速、日立台でのオープニングマッチで初ゴールを決め、ひとつのビハインドを追いかけた全員の執念を代弁してみせた。その後も順調に加点し、16ゴールを記録。得点王ランキングのトップ10に入り、噂の真相を世に知らしめた。
1977年生まれ、28歳。キャリアのピークの中で川崎との契約を1年間延長し、4年目のシーズンを控えている。
ブラジルでは、飛び抜けた力で主役の座を掴む選手のことを「クラッキ」と呼ぶ。最上級の実力、華麗さ、信頼度を兼ね備え、周囲の称賛を欲しいままにし、ホームタウンの期待を背に受け、結果を残していく。
ジュニーニョは05シーズンでその全てを達成した。アタックの中心選手として高いパフォーマンスを持続し、対戦チームから「川崎と言えばジュニーニョ」と怖れられた。
中村はダイレクトなチャレンジのパスを優先し、マルクスはランニングスペースやコンビプレイを狙った。クラッキの個人能力が無ければ、どちらも実らない。
そして、ボールホルダーとなった瞬間、自慢のスピードとテクニックでショータイムに移る。その真髄は、対人動作で敵を嘲笑う「ドリブル」ではなく、スペースへボールを運びスピードを活かす「ランウィズザボール」にあった。双方を使い分けることが出来るが、身体のキレが良い時には必ず後者を披露した。とりわけ、Jリーグにおいて最も異質で脅威的であるプレイは、マーカーを背負いながらパスをトラップし、旋回するようにして素早く前進し、ボールに触れることすら許されない愚か者たちを置き去りにするシーンである。
つまり、単なる「高速ドリブル」ではないから、足下に飛び込まれにくい。かつ、強い責任感がエゴと成り変わるようにしてパスを拒絶する悪癖は、ゲームの流れやコンディションが悪い時に限られていた。90分間の大半でチームメイトから頼りにされ、等々力の期待に応えていった。
常に目立つわけではないが、要所で存在感を発揮し、麻生での貢献も絶大なものだった。
チームの成績が不振に陥った際には、ホームパーティを企画した。合流初日で緊張を隠せないアラゴネイを気遣い、大げさに転んでみせた。ゲーム前日に明るい雰囲気でミニゲームに取り組む選手たちを一層盛り上げるために、レフリー役のエジソンコーチに足を狙ったスライディングをかました。
表裏からチームを支える、J1屈指のブラジル人選手。川崎のクラッキは、勝利をもたらすために戦い続ける。
Text by H.Nishikawa.(Wednesday, 1 February, 2006, 11:20)
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