05-06 Players tracks 「5.箕輪義信」
まだ川崎が石崎監督に率いられていた頃、大柄なセンターバックが等々力で何のひねりもないフィードボールを蹴っていくシーンを覚えている。スタンドは軌道の行方にため息を被せた。
しかし、それは、日本人センターバック全員に通じる欠陥部分への取り組みだった。当時、バックラインから正確なロングパスを送ることができる選手は清水の森岡くらい。今になっても依然として、この類のプレイを得意とする選手はなかなか現れないでいる。
2005年9月17日。味の素スタジアムでの対東京V戦。川崎は多摩川ダービーを今野の決勝ゴールによって制した。そのアシストを記録した箕輪は、ディフェンス間のギャップを裂くスルーパスを成功させた。また、シーズンを通じ、関塚監督が重要視するビルドアップにおいて、右サイドへ開いてスクエアパスを受け、ダイアゴナルランを仕掛けたフォワードへのチャレンジのパスを送り続けた。何気ないインサイドキックを正確に蹴るシーンから、その成長を窺い知ることができた。
持ち味である、強さ、高さも向上している。メニューの合間を縫っては自らに筋力トレーニングを課し、終了後には入念なクールダウンを欠かさない。ストイックな姿勢でフットボールに取り組み、得た自信をJ1の舞台で体現していった。
やがて、Jリーグオールスターへの参加を優先した中澤と宮本の欠員補充の意味を持ちながら、ついに最初のA代表キャップを記録。自身が日本のトップレベルにあることを世間に証明してみせた。
箕輪義信、川崎市出身の29歳。一般的な成長曲線に比べ、少し遅れてキャリアのピークを迎えている。第一子が生まれてから臨む初めてのシーズンでも、麻生でひたすら修行に励み、チームに大きな貢献をもたらすだろう。
その先には、A代表復帰が待ち受けているかもしれない。ライバルが不調に陥るか、アクシデントにぶつかれば、ジーコ監督によって電話が鳴らされる。その際は、川崎市民代表として川崎を離れ、ワールドカップ開幕の一週間前に訪れる、30回目の誕生日をドイツで過ごすことになる。
ただし、箕輪は「ワールドカップメンバー」の称号欲しさのためではなく、等々力で全力を尽くすために、日々トレーニングを積んできた。心の奥底で強く思う目標に向かって、プロフェッショナルな心構えを貫き通すように、黙々と努力を重ねていくに違いない。
そして、貪欲に、着実に上達していく。川崎のハードマンは、最高のシーズンを掴もうとしている。
Text by H.Nishikawa.(Thursday, 19 January, 2006, 6:00)
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