05 Play-off 2nd 柏 v 甲府 「夢、叶う」 Highlight
周囲の予想に反し、早野監督はクレーベルを起用した。ミドルゾーンでのプレイメイカーを欲し、バイタルエリア周辺でのチャンスの演出を期待したのだろう。
しかし、体格でも引けをとらない奈須が睨むように挑みかかり、チャレンジのパスを封じる。平山のオーバーラップを軸とするサイドアタックに対しては、全員が正しいポジショニングを取り、動きの少ない柏のフォワードラインを黙らせた。長身ながら対人動作で外に逃げる悪癖を持つ矢野、焦れてミドルゾーンに遊びに来るレイナウドは、秋本とアライールの自信を掻き立てるためにプレイしたも同然だった。
出足の勢いで上回る甲府は敵陣からフォアチェックを仕掛け、順調にゲームを支配する。左右からクロスを射てチャンスを迎え、10分に早々と先制ゴールを掴む。右サイドからのクロスをマーカーと競ったバレーがルーズボールを押し込んだ。アグリゲートスコアは1-3。日立台は3ゴールを記録しなければならなくなった。
大木監督が用意したプランが遂行されていく。圧力をかけながら規則正しく守り、シンプルなビルドアップに進む。前にコースが空けば迷わずフィードを送り、燃える火に薪を注ぐように運動量を増やした。土屋は持ち場でひとり奮闘したが、柏は支配権を取り戻せなかった。
それもそのはず。逆転を誓った指揮官が採った布陣は4-4-2。長谷川、バレー、石原に4枚で対応し、藤田と倉貫を主に明神と大谷が注視することで、個々の能力差を活かす展開を数えるはずだった。目前の現実は、平山が「ボールをキープするとか、1対1で止めるとか、そういう基本的なことが全然できていなかった」と振り返った通り、出足の鈍い個々が局面で競り負け、球際で覇気の無さを証明する、無様な失態を重ねていった。
期待を膨らませたシーンは、22分だけ。敵陣でのビルドアップからダイアゴナルに外へ走ったレイナウドがクレーベルのパスを受け、そこで空いたスペースへ走り込んできた大谷へバックパス。左足によるフィニッシュはボール2個分の間隔で右へ逸れた。
J1昇格の行方は、その5分後に定められた。
南の正しいポジショニングによってピンチを回避していた柏はなおも押され続け、とうとう破綻する。コーナーキックからのセカンドアタックで「仕掛けて行こうと思って取れた」とした突破を試みた石原がボックス内で倒され、ペナルティをバレーが制する。1-4。一方的進行のまま、1stハーフが終了した。
決戦前日に夕方の空でほほ笑んでいたアフロディーテは、甲府のゼッケン16番に恋をした。バレー。190cmの長身ながら、突破を身上とする、謙虚なブラジル人アタッカンテの名だ。
2ndハーフのスタートを押し込まれ、52分にレイナウドに追撃のゴールを許した直後だった。
ルーズになったバイタルエリアへ侵入したバレーは、南とのワンオンワンを冷静に決めた。失点にも声援を絶やさなかったクルバは、ゴールネットが目前で揺れたことに狂喜した。
36分に矢野とフランサを入れ換え、ハーフタイムには大谷に替えて宇野沢を投入しギャンブルに出た柏は、49分に永田が2枚目のイエローカードを宣告され、51分に平山と小林祐を替え、傷口にばんそうこうを貼ることを余儀なくされていた。それも、女神を味方にした男のハットトリックによって、あっさり剥がされた。
大木監督は60分に長谷川に替えて池端を送り出す。「誰がどこにいるのか分からないような状態になった」ことで、大味な展開が続いていた。ベンチの意思を池端に託し、「マークを決めて、ディフェンスに入る」策を施した。
甲府は徐々にゲームをコントロールし始め、敵の猛攻を遮ってカウンターを返す流れを創っていく。左足首の捻挫を抱えながら出場した明神がリスクマネージメントを試み、南が至近弾を正面で抑える巧みさを見せたが、どうにもならなかった。
68分、藤田の放った弾道が南に当たり、リバウンドボールをバレーがプッシュ。69分、右サイドからカットインしたバレーが左足でボールをゴールマウスに運び、小瀬からの来客たちに向かって何度も左胸のエンブレムをたたく。瞬く間にチームメイトが集まり、フェスタ(祭)が催された。
それは86分の宇野沢のゴールで一時の中断を挟んだが、直後に浅過ぎるオフサイドラインを容易に破ったバレーが左サイドから猛進して南を嘲笑い、冷静にファーサイドを捉えてダブルハットトリックを記録。まさかの展開に、盛り上がりはピークに達した。
セカンドレグ、2-6。アグリゲートスコア3-8。存続危機から立ち上がり、ついにJ1へ昇ることになった。
甲府は、夢を叶えた。
Text by H.Nishikawa.(Sunday, 11 December, 2005, 14:00)

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